プロローグ
現代の食卓がいかに添加物に依存しているかご存知でしょうか。例えば、コンビニでサンドイッチを買って食べれば、それだけで十数種類もの化学添加物を一度に摂取することになります。添加物は食物を腐らないように長期保存したり、味を良くしたり大変便利な素材ですが、一方、因果関係は断定できないものの、添加物の持つ毒性により、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎等を引き起こしたり、現代人に多く見られる「切れやすい性格」の一因とも言われています。

例えば、今日市販されるワインは口当たりが良く、飲みやすいものですが、昔のワインは必ずしも飲みやすいとは限りませんでした。古代ローマの医者の記録によるとワインは「酸っぱいもので、体を温める効果があり、血行をよくする」とあります。この酸味のきついワインを甘く、美味しく変化させたのが鉛でした。鉛のワインカップに酸っぱいワインを入れ弱火で暖めると、鉛は酸味の強いワインの中に溶け込み、わずかな甘みを生み出します。こうして飲みにくいワインに鉛という“添加物”が加えられた結果、多くの人々が慢性の鉛中毒になり、様々な症状に苦しみました。中毒症状の例をあげると、腹部の慢性的な不快感や痛み、吐き気等で、ひどい場合は知的障害を引き起こすことすらありました。
現代の食卓がいかに添加物に依存しているかご存知でしょうか。例えば、コンビニでサンドイッチを買って食べれば、それだけで十数種類もの化学添加物を一度に摂取することになります。添加物は食物を腐らないように長期保存したり、味を良くしたり大変便利な素材ですが、一方、因果関係は断定できないものの、添加物の持つ毒性により、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎等を引き起こしたり、現代人に多く見られる「切れやすい性格」の一因とも言われています。

例えば、今日市販されるワインは口当たりが良く、飲みやすいものですが、昔のワインは必ずしも飲みやすいとは限りませんでした。古代ローマの医者の記録によるとワインは「酸っぱいもので、体を温める効果があり、血行をよくする」とあります。この酸味のきついワインを甘く、美味しく変化させたのが鉛でした。鉛のワインカップに酸っぱいワインを入れ弱火で暖めると、鉛は酸味の強いワインの中に溶け込み、わずかな甘みを生み出します。こうして飲みにくいワインに鉛という“添加物”が加えられた結果、多くの人々が慢性の鉛中毒になり、様々な症状に苦しみました。中毒症状の例をあげると、腹部の慢性的な不快感や痛み、吐き気等で、ひどい場合は知的障害を引き起こすことすらありました。
ベートーヴェンの鉛中毒と気性
ベートーヴェン(1770~1827)は、25歳頃から音楽家として致命的な難聴をはじめ、刺すような腹部の痛み、激しい関節痛、さらには鬱(うつ)といった神経症状に悩まされ続けました。そして56歳で生涯を閉じたときは、死因が "アルコ-ルの大量摂取による肝硬変"と発表されました。彼は気性が激しく、家事を世話するメイドが頻繁に替わったのは有名な話です。一番弟子であったピアニストのリースの回想録では、女性への関心が異常に強く、現代でいうところのストーカー並の求愛行動をとっています。その感情の起伏の激しさを引き起こしたのが、実は鉛入りのワインの大量摂取であるという説が有力になっています。

ベートーヴェンの遺髪
今日の医学の進歩により、ベートーヴェンのワインの飲酒量が、彼の毛髪のDNAから推測できました。アメリカのエネルギー省とイリノイ州の民間研究所との共同研究によってベートーヴェンの毛髪8本をDNA鑑定したところ、通常の100倍近い鉛が検出されました。当時のワイン業者が鉛の化合物を甘味の添加物として使った量から推測して、少なくとも1日3~4本(約3リットル)は飲んでいた勘定になります。つまり、ワインの大量摂取により、ベートーヴェンが抱えていた「胃痛」「神経症」「うつ病」などが引き起こされ、結果、感情の起伏が激しくなったと考えられるわけです。

「ベートーヴェンの遺髪」(ノンフィクション)
ベートーヴェンの難聴もワインが原因?
ベートーヴェンの気性の激しさは「鉛中毒説」が有力だとお分かりいただけたと思いますが、音楽家として致命的な聴覚障害に陥った原因は何だったのでしょうか?「鉛中毒説」を当てはめるのは無理があります。もしそうならば、当時ワインを飲んでいた人は皆何かしらの聴覚障害に陥ったことになります。
ベートーヴェンの聴覚障害が始まったのが25歳のあたりからで、その頃煩った病気もしくは、先天的な病気によるものだと推察できます。後世の研究の結果、いくつかの医学論文で取り上げられた有力な説が「梅毒」です。現在はペニシリンという特効薬があるため、梅毒は早期発見すれば治療できますが、ペニシリンが発見される(1929年)以前は、不治の病でした。しかも直接死をもたらす病気ではなく、終生付き合う病気です。ベートーヴェンは死ぬまで、自分を長年悩ませた聴覚障害と慢性の下痢/腹痛の原因を解明しようと必死でした。しかし、何故か彼や周りの医師が梅毒を疑っていた形跡が見られません。そのため、適切な治療を受けられず、聴覚や性格に障害を引き起こしたと考えられます。
梅毒はベートーヴェン以外にも多くの音楽家がかかったと言われる疾病です。シューマン、シューベルト、ドニゼッティー、スメタナ、ヴォルフと疑わしい作曲家をあげるときりがありません。

食品添加物にせよ、疾病にせよ、食生活や生活習慣が人間の性格まで変えてしまうのは本当に恐ろしいことです。これは古代ローマから今日まで続いている「人災」と言えるでしょう。
ベートーヴェン(1770~1827)は、25歳頃から音楽家として致命的な難聴をはじめ、刺すような腹部の痛み、激しい関節痛、さらには鬱(うつ)といった神経症状に悩まされ続けました。そして56歳で生涯を閉じたときは、死因が "アルコ-ルの大量摂取による肝硬変"と発表されました。彼は気性が激しく、家事を世話するメイドが頻繁に替わったのは有名な話です。一番弟子であったピアニストのリースの回想録では、女性への関心が異常に強く、現代でいうところのストーカー並の求愛行動をとっています。その感情の起伏の激しさを引き起こしたのが、実は鉛入りのワインの大量摂取であるという説が有力になっています。

ベートーヴェンの遺髪
今日の医学の進歩により、ベートーヴェンのワインの飲酒量が、彼の毛髪のDNAから推測できました。アメリカのエネルギー省とイリノイ州の民間研究所との共同研究によってベートーヴェンの毛髪8本をDNA鑑定したところ、通常の100倍近い鉛が検出されました。当時のワイン業者が鉛の化合物を甘味の添加物として使った量から推測して、少なくとも1日3~4本(約3リットル)は飲んでいた勘定になります。つまり、ワインの大量摂取により、ベートーヴェンが抱えていた「胃痛」「神経症」「うつ病」などが引き起こされ、結果、感情の起伏が激しくなったと考えられるわけです。

「ベートーヴェンの遺髪」(ノンフィクション)
ベートーヴェンの難聴もワインが原因?
ベートーヴェンの気性の激しさは「鉛中毒説」が有力だとお分かりいただけたと思いますが、音楽家として致命的な聴覚障害に陥った原因は何だったのでしょうか?「鉛中毒説」を当てはめるのは無理があります。もしそうならば、当時ワインを飲んでいた人は皆何かしらの聴覚障害に陥ったことになります。
ベートーヴェンの聴覚障害が始まったのが25歳のあたりからで、その頃煩った病気もしくは、先天的な病気によるものだと推察できます。後世の研究の結果、いくつかの医学論文で取り上げられた有力な説が「梅毒」です。現在はペニシリンという特効薬があるため、梅毒は早期発見すれば治療できますが、ペニシリンが発見される(1929年)以前は、不治の病でした。しかも直接死をもたらす病気ではなく、終生付き合う病気です。ベートーヴェンは死ぬまで、自分を長年悩ませた聴覚障害と慢性の下痢/腹痛の原因を解明しようと必死でした。しかし、何故か彼や周りの医師が梅毒を疑っていた形跡が見られません。そのため、適切な治療を受けられず、聴覚や性格に障害を引き起こしたと考えられます。
梅毒はベートーヴェン以外にも多くの音楽家がかかったと言われる疾病です。シューマン、シューベルト、ドニゼッティー、スメタナ、ヴォルフと疑わしい作曲家をあげるときりがありません。

食品添加物にせよ、疾病にせよ、食生活や生活習慣が人間の性格まで変えてしまうのは本当に恐ろしいことです。これは古代ローマから今日まで続いている「人災」と言えるでしょう。
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