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音楽の冗談

音楽、美術、映画、演劇、文学などの有名アーティストや、偉大な才能を持つ無名なアーティストたちに焦点を当て、彼らの業績や人生を一風違った視点で掘り下げます。

プロローグ

日本では、CMなどにしばしば使われるルイ・アームストロングの「バラ色の人生」がお馴染ですが、オリジナルはフランスの大歌手エディット・ピアフの持ち歌として知られています。また、作詩はピアフ、作曲はピエール・ルイギーが定説となっていますが、これには諸説があり、ピアフが作詞、作曲したと本人の自伝で述べられています。「バラ色の人生」はいまだに世界中で愛されている名曲にも関わらず、フランスにおいても、米国においても大ヒットに至るまでに数年の時間がかかっています。今回は、ほとんど知られていない「バラ色の人生」が大ヒットに至るまでの軌跡と、曲が誕生したきっかけとなった恋物語をご紹介します。
 
映画では「麗しのサブリナ」 (1954)でオードリーヘップバーンによって歌われた
作曲者は誰か?

ピアフは、1944年にムーラン・ルージュに出ていたハンサムなイヴ・モンタンを見染め、すぐに恋人関係になり同棲を始めます。ジャズ歌手としてうまくいっていなかったモンタンの才能を見出し、シャンソン歌手として育てることにしたのです。それだけでなく、映画『夜の門』(テーマ曲「枯葉」が大ヒット)にイヴ・モンタンを推薦し、映画の成功を願って2年間酒を絶つまでして、彼に入れ込みました。そしてピアフの願いの通り、モンタンが世界的なスターになったとき、彼には自分がもはや必要ないと悟り、静かにモンタンのもとを去っていきました。そして、その時の想いを込めて作ったのが「La vie en rose」というわけです。作曲はルイギーとなったのは、フランスの音楽作曲家協会の試験に合格前のピアフには、作曲者として登録できることができず、やむを得ず、友人ルイギーの名前を借りたというのがピアフ本人の主張です。

ピアフのライブ歌唱 La Vie En Rose (English version)


「バラ色の人生」誕生の切ない話としてドラマ性はありますが、事情はもう少し混み合っています。1945年5月、友人の歌手マリアンヌ・ミッシェルはピアフを訪ね、新しいシャンソンが欲しいと依頼しました。その時、ピアフは新曲のスケッチは出来ており、メロディを聞かせましたが、作詞はこれからでした。そこで、モンタンに想いを寄せて心に浮かんだ文句「彼が私を抱くと、私には物事がバラ色に見える」を話すと、ミッシェルは「人生がバラ色に見える」としてほうが良いと答えました。こうして、「バラ色の人生」という曲のコンセプトが決まったのです。人生がバラ色という文言に対して、親友の作曲家マグリット・モノー(「愛の賛歌」の作曲家)は歌詞が馬鹿げていると辛辣でした。1945年11月にマリアンヌ・ミッシェルは、完成した新曲を自分のキャバレーで歌い、評判がよかったのでレコードにも吹き込んだところ、これがヒットしました。ピアフ本人は、この曲がヒットするとは思わなかったので、最初は自ら歌うつもりではなかったのですが、ミッシェルのヒットを目にして、翌年1946年10月にレコーディングし、47年にリリースしたところ大ヒットとなりました。


世界的ヒットには紆余曲折が
“La vie en rose”は、映画では「麗しのサブリナ」 (1954)でオードリーヘップバーンによって歌われ、その他20近い映画で使われています。一方、カバーとしてはサッチモから山下達郎まで、50以上の有名なアーティストによって歌われています。世界的なヒットになったきっかけは英語版の歌詞がマック・デイヴィッド(ディズニーの「ビビデバビデブー」の作詞家)により作られ、米国で火がつき、世界的なヒットになったと簡潔に解説されますが、これも事情が複雑で、大ヒットまでに3年ほどかかっています。この曲の楽譜がフランスで出版されたのは47年で、同年早くも英国で”Take me to your heart again”というタイトルで歌われますが、原曲と比べて軽いノリのポップス調でヒットしませんでした。

不発に終わった"Take me to your heart again"


続いて、1948年、米国で作詞家マック・デイヴィッド”Simply a Waltz”としてリリースしますが、これも不調に終わりました。デイヴィッドは懲りずに、”You’re too dangerous, Cherie”として、再リリースしますが、トニー・マーティン他人気アーティストで歌われたにも関わらず、ヒットしませんでした。そこで、3度目の正直とばかり、1950年に原題名を尊重して訳し直し再々リリースしたところ、今度は1950年6月にサッチモが録音した同曲が世界的に大ヒットしました。
この曲に惚れ込んでいたのか、3度目に念願がかなったのです。

ルイ・アームストロングの「バラ色の人生」


これにつられて、ピアフの英語版も彼女にとって初めての海外ヒットとなりました。その後、この歌は世界各国で愛され続け、1998年にはグラミー賞「名声の殿堂」入りを果たしました。
2007年にフランスで大ヒットしたピアフの自伝映画もタイトルは“La vie en rose”で(邦題は「愛の讃歌」)、エデイット・ピアフにとっては代名詞となるタイトルです。

最後に詩を紹介します。

原詩:エディット・ピアフ
英語詞:マック・デイヴィッド
作曲:ピエール・ルイギー

  La Vie en Rose

  Des yeux qui font baisser les miens
  Un rire qui se perd sur sa bouche
  Voilà le portrait sans retouche
  De l'homme auquel j'appartiens

  Quand il me prend dans ses bras,
  Il me parle tout bas
  Je vois la vie en rose,
  Il me dit des mots d'amour
  Des mots de tous les jours,
  Et ça m'fait quelque chose

  Il est entré dans mon cœur,
  Une part de bonheur
  Dont je connais la cause,
  C'est lui pour moi,
  Moi pour lui dans la vie
  Il me l'a dit, l'a juré
  Pour la vie

  Et dès que je l'aperçois
  Alors je sens en moi
  Mon cœur qui bat

  Des nuits d'amour à plus finir
  Un grand bonheur qui prend sa place
  Des ennuis, des chagrins s'effacent
  Heureux, heureux à en mourir

  Quand il me prend dans ses bras,
  Il me parle tout bas
  Je vois la vie en rose,
  Il me dit des mots d'amour
  Des mots de tous les jours,
  Et ça m'fait quelque chose

  Il est entré dans mon cœur,
  Une part de bonheur
  Dont je connais la cause,
  C'est lui pour moi,
  Moi pour lui dans la vie
  Il me l'a dit, l'a juré
  Pour la vie

  Et dès que je l'aperçois
  Alors je sens en moi
  Mon cœur qui bat

  Des nuits d'amour à en mourir
  Un grand bonheur qui prend sa place
  Les ennuis, les chagrins s'effacent
  Heureux, heureux pour mon plaisir

La Vie en Rose - Mireille Mathieu




  バラ色の人生(壺齋散人訳)


  二つの目がわたしをみつめる
  唇にはかすかな微笑
  まぎれもない わたしが
  愛した人の ポートレート

  あの人の腕に
  抱かれたわたし
  バラ色の日々
  あの人が語った
  愛の言葉が
  わたしをとろかす

  わたしのこころを
  とらえた人との
  幸せな日々
  互いのために
  生きていこうと
  語った人よ

  それを思うと
  わたしのこころは
  高鳴るのです

  幸せだったわたしたち
  愛の夜は更けず
  悲しみは消え
  死ぬほど幸せだった

  あの人の腕に
  抱かれたわたし
  バラ色の日々
  あの人が語った
  愛の言葉が
  わたしをとろかす

  わたしのこころを
  とらえた人との
  幸せな日々
  互いのために
  生きていこうと
  語った人よ

  それを思うと
  わたしのこころは
  高鳴るのです

  死ぬほど幸せだった夜
  愛の余韻は続き
  悲しみは消え
  わたしは幸せだった



以下いろんな歌手が歌った La Vie En Roseを紹介します。

少しJazzyなIn-Gridの La vie en rose


Cindy Lauper のLa Vie En Rose


ジャック・ニコルソンのLa Vie En Rose
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